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おねしょ卒業!プロジェクト

監修:昭和大学横浜市北部病院こどもセンター長
小児科 科長 教授 
池田 裕一 先生
東京成徳大学・大学院 心理学研究科
(心理・教育相談センター長)
田村節子 先生

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保護者配布用チェックシート

おねしょについて

おねしょとは

5歳以降におねしょが月に1回、3ヵ月以上続く場合、「夜尿症」といいます。

小学校入学前後

日本には約80万人の夜尿症がある子どもがいて、アレルギー疾患に次いで多い病気です。

夜間に多く分泌される抗利尿ホルモン(体に必要な水分を尿にさせないホルモン)が少なく尿量が多いこと、膀胱の容量が小さいこと等が原因です(下図)。「愛情不足」、「しつけが悪い」、「子どもがだらしない」等が原因ではありません。

就寝中に膀胱が満たんになる!

小学校入学時におねしょがあった場合、高学年になっても約半数の子どもでおねしょは続いています。そのため、高学年で生じる宿泊行事を楽しく過ごせるよう早めに工夫していきます。

おねしょは家庭内の問題ではありません。おねしょの経験は、いじめよりもつらいストレスをもたらし、子どもの自尊心(自己肯定感)が低下する(劣等感を感じる)との報告があります。これらが生じると学校生活の質の低下をまねくことがあるため、楽しく学校生活を過ごしてもらうよう、我々担任もかかわります。

6ヵ月以上にわたっておねしょが消失していたにもかかわらず、またおねしょが生じる「二次性夜尿症」があります。原因の1つとして環境の変化によるストレスがあげられます。弟や妹の誕生により親の関心が薄れてしまったと感じてしまっている等の事象であれば改善が期待できます。

気を付けていただきたいこと

子どもに対し、「焦らない、怒らない、ほめる」を大切にします。

おねしょをしたからといって罰を与えないようにしましょう。(×おねしょで濡れたパンツを洗わせる)

他のきょうだいと比較しないようにしましょう。(×妹はもうおねしょしないよ)

他のきょうだい、同居している祖父母などに、おねしょがわからないようにします。

おねしょをしたことを怒らないようにしましょう。おねしょをしなかった日はしっかりほめましょう。

対策

寝る前に必ずトイレに行きます。

寝る前に水分を摂り過ぎません(夕食時から就寝まではコップ1杯(200cc)程度)。ただし、水分はからだにとても大切ですので、朝から夕方の間はたっぷりとってください。

早寝、早起きをします。不規則な生活でもおねしょが生じやすくなります。

夕食後から寝るまでは、可能なら2 ~ 3時間あけます。

便秘があれば治します。便秘が治ると、7割の子どもでおねしょが治ります。便秘とは、便の回数が少ない(週2回以下)か、出にくい(出血や痛みがある)ことをいいます。

秋や冬は暖かくして寝ます。寒いと尿の量が増えおねしょが生じやすくなります。

上記の生活改善を1~2ヵ月程度行ってもよくならず気になる場合には、かかりつけの小児科医に相談する、または、夜尿症を診てくれる病院を受診します。夜尿症を診てくれる病院は、「近くの病院を探す」で探すこともできます。

最後に

布団

おねしょがあることで、心配になったり布団やパジャマの洗濯など大変に感じることもあるかもしれません。しかし、おねしょの治療(上記対策等を含む)に意欲的に取り組み治った子どもは、「自分で解決した」と認識し、他のことにも自主的に取り組むきっかけとなります。お子さまの貴重な体験ととらえ、前向きに考えましょう。

昼間のおもらしについて

昼間のおもらしとは

昼間のおもらしは「昼間尿失禁(ちゅうかんにょうしっきん)」といいます。

パンツが湿っているくらいのおもらしもあります。

排尿に関わる臓器/器官(尿道、尿管等)や機能(膀胱で尿が溜まりにくい等)に異常がある場合があります。 臓器や機能の異常となるため、そのまま放っておいても治りにくいのが現状です。

「パンツがいつも湿っている」場合には、少しずつ尿が漏れ続けている可能性があります。漏れているとわからない程度の漏れもあります。

「トイレが我慢できず漏れてしまう」場合には、膀胱が不安定に過剰に活動している可能性があります。頻繁にトイレに行ったり、下図のように足をクロスして立ったりなどの行動がみられることもあります。

足を組む ペニスをつまむ 股間をかかとでおさえる

尿失禁は家族以外に知られることが多々あります。さらに、トイレのことばかりが気になり授業に集中できない等、子ども自身への精神的な影響は大きいものがあります。

尿失禁の原因が病院への受診(治療)でしか治らない可能性もあります。

気を付けていただきたいこと

トイレを我慢することは病気の悪化につながるためよくありません。我慢させないようにしましょう。

対策

たくさんお水を飲んで、規則正しくトイレに行きます。 (詳しくはおもらしのサイト「おしっこトラブルどっとこむ」をご覧ください)

授業中にトイレに行きたいと手を上げさせることは、子どものストレスになる場合があります。また、トイレを我慢させることにもつながります。そのため、そっとトイレに行けるよう座席に配慮しますので、お知らせください。

小児の腎臓内科医か泌尿器科医がいる総合病院や大学病院で診てもらえます。 大きな病院にいる専門医ですが、かかりつけの小児科医から紹介してもらうこともできます。

楽しい宿泊行事 参加に向けての夜尿症対策

宿泊行事は、貴重な集団生活を体験する良い機会です。たとえ夜尿が毎晩続いていても、安心して参加できるよう、以下の対策を行います。 十分な時間的余裕をもって病院を受診するのが理想ですが、夜尿がある状態でお泊りが予定されている場合には、生活改善に取り組み、当日は先生方の協力の元、おねしょパンツ等も利用し、楽しいお泊りとなるように乗り切ります。

生活改善を始める

「おねしょについて」の対策を参照ください。

宿泊行事参加時の対応

コップ1杯以下

夕食時と夕食後の水分摂取量を制限(約200㏄:コップ1杯以下)
夕食後のキャンプファイヤー時のスイカ等、果物の水分にも留意

就寝前の排尿と、夜中に起こしての排尿

濡れやシミが目立ちにくい黒・紺などの濃い色のパジャマの持参

市販のおねしょパンツの利用やパンツの工夫(下図)

パンツの工夫

女性用失禁パッド 2枚重ね

黒や紺など濃い色のブリーフ(すき間のあるトランクスは不適)を2枚用意して重ね合わせます。ブリーフとブリーフの間に市販の女性用失禁パット(中厚)を2枚ギュッと並べて、ずれないようにかがり縫いをします(ぬれそうな場所である、男児は陰茎周辺、女児は外陰部周辺を中心にして)。最後にパンツの胴周り、足周りの太さにゆとりをもって2枚をかがり縫いします。立派な1枚のパンツに変身します。